首凝りの鍼灸治療

「首凝り」は「肩こり」と並んで現代病とも言える症状です。

30年この業界で仕事をしてきましたが以前と比べると「凝り」の状態が何倍にも酷くなっているのです。

原因はズバリ、スマホとストレスです。

この二つは現代人にとって切っても切れない関係ではないでしょうか?

首凝りは単に首の凝りだけに留まらずに脳と体を連結している重要な神経や血管が通っていますので、ここの筋肉が凝りますと神経や血管を圧迫してしまい、脳が酸素不足に陥ります。

その為様々な自律神経症状を発症させます。

それだけならまだいいのですが脳への血流障害が長く続きますと脳卒中や脳腫瘍へ発展する恐れがあるのです。

頸は大きく分けて5つの領域に分けて治療法を考える必要があるのです。



「首凝り」は5つに分けて治療します


首の筋肉は一言で首と言っても非常に多くの種類があります。

この事は頭部の位置を変えるため、正確に言いますと目線を広範囲に広げる為には首が上下左右回旋する必要がある為なのです。

現代人はパソコンやスマホ、ゲームなどで目線を固定する必要があるために首を動かさない傾向があるのです。

まさにそのことが首凝りの原因になっているのです。

首は以下の5つの領域に分けて治療する必要があるのです。

1.頭頚部境界線
2.後頸筋
3.胸鎖乳突筋
4.斜角筋
5.前頚筋

5つ全て治療する訳ではなく、患者さんの状態に合わせて組み合わせて治療していきます。

1.頭頚部境界線

頭と首の境目を頭頚部境界線と呼んでいます。

頭頚部境界線は筋肉ではなく関節ですが、後頚筋や胸鎖乳突筋、僧帽筋が絡んで影響を及ぼしています。

いわゆる関節には「遊び」といって隙間が存在するのですが姿勢の問題などで後頚筋、胸鎖乳突筋、僧帽筋が硬くなりますと筋肉が縮みますのでこの関節の遊びを引っ張ってしまい、隙間が無くなるのです。

この関節の隙間には直接脳と体を結んでいる脊髄や血管が通っていますので隙間がなくなると脳への血流障害を起こすばかりか、神経も圧迫してしまいますので様々な神経障害も引きおこしてしまいます。

また、スマホやパソコンの見すぎてストレートネックになってしまい、頭の重さに耐えられなくて頭と首の隙間がなくなってしまうという現象も引き起こすのです。

頭頚部境界線で最も重要な部位は頭部と頸椎をつなぐ後頭環椎関節です。

ここの関節が固くなりますと頸が回らなくなってしまいます。

頭頚部境界線と後頭環椎関節は下図のようになっています


2.後頚筋

首の後ろの筋肉です。

後頚筋は深い位置にある筋肉から後頭下筋群、斜角筋群、半棘筋群、板状筋群、僧帽筋に分けられます。

この筋群が凝りますと主に椎骨動脈を圧迫してしまいます。

後頚筋は一番深い筋肉で後頭下筋群が凝りますと4センチくらい刺さないと届きませんのでテクニックが必要となります。

またここには紙面の関係上載せませんが脊柱起立筋との関係も深いので背中の動きでお互いが影響を及ぼします。

首凝りのメインの筋肉となります。


・後頭下筋群

大後頭直筋、小後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋の4筋で後頭下筋群と呼ぶ。

後頭骨、第1、2頸椎の間、頸部の深層にある。共同で作用し、頭の関節の位置と運動の調整を行う。

この部位がスマホの影響を一番受けやすい部位で一番深い筋肉なので脳への血流の影響を与える。



・半棘筋群

脊柱起立筋の深層にあり、頭、頸、胸に分かれる。

半棘筋の深層に多裂筋、さらに回旋筋と存在し、この3つを横突棘筋と呼ぶ。

頸椎の支持に大きく働くのでスマホで凝りやすい筋肉と言えるでしょう。

両側が動くと頸椎を後方に曲げ、片側が動くと頸椎を同側に曲げ、反対側に回す




・板状筋群

板状筋は頭板状筋と頚板状筋から成ります。
二つ共に正中線から起こり、上外側に頸椎(頚板状筋)及び頭蓋(頭板状筋)にまで伸びます。

頭板状筋は僧帽筋や菱形筋の深層に位置し、頚板状筋は頭板状筋の深層に位置します。。



・僧帽筋

頸部背側から背部に広がる三角形の大きな筋で、上中下の3部に分けられる。

収縮する部位により上肢帯を様々な向きに動かす。

副神経と頸神経の二重支配を受ける。

いわゆる首凝りのみならず、肩こりもこの筋の緊張が主な原因とされる。



3.胸鎖乳突筋

頚の両側に位置する大きな筋腹で分かりやすい筋肉です。

両側の筋が同時に作用すると頭は後屈し、片側のみの場合は頭は側屈し、反対側へ回旋する。

表層の筋肉で凝りやすいのですが直下にリンパ節や頸動脈が走るので敏感な筋肉です。

ここが凝ると頸動脈を圧迫するので大脳への血液供給が減少してしまいます。


胸鎖乳突筋の治療は横向きでの治療が効果的なのです。


4.斜角筋

斜角筋群は前斜角筋、中斜角筋、後斜角筋に分かれます。

胸鎖乳突筋と前斜角筋との間を鎖骨下静脈が、前斜角筋と中斜角筋との隙間(斜角筋隙)を鎖骨下動脈と腕神経叢が通過します。

この筋肉は実際には肩と首の付け根にあります。

臨床でも肩こりとして患者さんが良く訴える場所ですが解剖学的に言うと首になります。


5.前頚筋

前頚筋は舌骨を介して舌骨上筋群と舌骨下筋群に分かれます。

臨床上あまり凝らない筋肉です。

睡眠時無呼吸症候群や美容鍼で顎下の浮腫みが気になる場合に治療が必要な筋肉です。

舌骨上筋
舌骨下筋

首凝りの鍼治療

首凝りは以上のように5つの側面から患者さんの状態に合わせて治療する必要があります。

場所によって治療する体位が違ってきますし、浅層の筋肉が凝っているのか、深層の筋肉が凝っているのかでも治療方法が全く違ってきます。

アキュレの鍼治療は80種類以上の鍼を打てますのでどんな患者さんにも適応が出来るのです。