坐骨神経痛とは?

坐骨神経痛は頑固な足の痺れ感を主訴とする疾患です。

症状はお尻から大腿部裏側(ハムストリング)にかけて痺れや痛みを感じます。

進行しますと下腿のヒラメ筋にまで症状が及びます。


坐骨神経は膝裏で腓骨神経と脛骨神経に分かれますので下図のように脛のほうに痛みや痺れを感じる人もいます。

下腿では腓骨に沿って痛みや痺れが現れる人もいます。

下腿にはこのように三つの線上のどれかに症状が現れます。

もしくはすべての線上に現れる人もいます。


一番ひどくなりますと足の親指にまで症状が現れてしまいます。

こうなりますと足首がうまく上がらなくなりますのでつまずいて転びやすくなってしまいます。

一昔前は坐骨神経痛は死ぬまで治らないなんて言われる時代がありました。

私の経験上でも「あの世まで神経痛を持っていくもんだ」なんて言っていた患者さんが多かったのを鮮明に覚えています。

それだけ坐骨神経痛は多くの人々を苦しめてきた疾患であり、治りにくい神経痛の代表格なのです。

それでは何故そんなに治りにくい疾患なのでしょうか? 

これには私がいつも提唱している筋肉の「凝り」と治療箇所が間違えているという二点で説明が出来るのです。

ご存じの方も多いと思われるのですが坐骨神経痛と言う名前は病名を表していなくて症状の名前なのです。

病名とはその症状が出てくる原因の事なので、坐骨神経痛は症状の一つなのです。 

坐骨神経痛の原因疾患は次の通りです。



坐骨神経痛の原因疾患

 

座骨神経痛を引き起こす原因は主に次の四つです


① 腰の骨の病変 (腰椎椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症)

② 股関節の異常

③ 梨状筋症候群

④内臓疾患からくる神経障害(糖尿病、がんなど。。) 


まず第一に坐骨神経痛の原因の判別を間違えますと改善の傾向がみられません。

しっかりとどの疾患からくる坐骨神経痛かを見極めなけらばなりません。


 

①腰の骨の病変からくる坐骨神経痛

腰の骨の病変からくる坐骨神経痛で一番有名なのが腰椎椎間板ヘルニアからくる坐骨神経痛です。

ここで注意してほしいのは坐骨神経に影響を与える腰の神経はL4とL5と仙骨です。

それより上位の腰の病変では坐骨神経痛は発症しません。

ですからL4以下の腰周辺の痛みがない場合は腰の骨の病変ではありません。


 

病院で腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症と診断されましても手術の適応でない限り鍼灸治療で改善が見込まれます。

むしろ手術の適応でない限り西洋医学では保存療法でしか対応できないので治癒は望めません。

しかし実際の臨床の場では腰椎の病変からくる坐骨神経痛は少ないように思います。

それは何故かと言いますと足に痺れまで現れる状態ですと既に手術の適応症になっているからだと思われます。

当院でも「どうしても手術が嫌だ」という患者さんを診た体験がありますがどんなに太い鍼を打っても効果が少なかったです。

今では手術適応の患者さんは丁重にお断りしています。


②梨状筋症候群からくる坐骨神経痛

実は坐骨神経痛の原因で 最も多い原因が梨状筋症候群 なのです。

梨状筋は下図の通り、坐骨神経の上を通っていますので、この梨状筋が凝ってきて硬くなると下に位置する上双子筋と挟み込むような状況になってしまい坐骨神経の絞扼障害を引き起こすのです。


この部分は丁度座ったときにお尻が椅子などに当たる位置ですので凝りやすくなるのです

梨状筋症候群は臀部下部のわかりにくい個所にありますので一見では分かりにくいのです。。

西洋医学の治療では足の異常は腰から来ると思っていますので梨状筋症候群の場合はどんなに腰の治療をしても治りません 。

当院を来院される患者さんの殆どが腰の治療ばかりして治らないと訴えますのでいかにこの梨状筋の部位が見過ごされているかが分かります。



長針の鍼が梨状筋症候群に効く!

この周辺の筋肉は腰周囲の筋肉と同様に人体で最も厚い部位ですので、鍼治療でも深く刺さなければ効果が見られない場所です。

この事が坐骨神経痛を治りにくくさせている一番の原因です。

通常の鍼治療院では6センチくらいの鍼しか扱えませんのでなかなか治癒に至らないのです。

ましてや整体や指圧マッサージなどの手技では梨状筋にまで効果的な刺激を加えることは絶対にできません。

当院では 最長15センチの鍼があります 。

通常の体格の人なら十分な長さですの重症な患者さんにも対応が出来るのです。

鍼を深く刺すと言いますと怖いイメージを抱くかもしれませんが臀部は比較的感覚が鈍い部位ですので思ったよりは痛みがないというのが大多数の患者さんの感想です。

 

梨状筋症候群は側臥位でないと効果が出ません。

上図のように側臥位になって股関節を屈曲した姿勢からが一番梨状筋に鍼が当たりやすいのです。

 

図では分かりにくいかもしれませんが実際には9センチくらいの深さまで鍼が刺さっています。


 

③股関節の異常からくる坐骨神経痛

坐骨神経の経路上には股関節がありますので股関節の異常があっても坐骨神経痛になります。

おおまかに二つの種類があります。

1.大腿骨後方変位

2.仙腸関節障害



1.大腿骨後方変位による坐骨神経痛

図のように大腿骨が後ろにずれますと上下双子筋、内外閉鎖筋が緊張して硬くなってしまい、坐骨神経を圧迫して起こる神経痛です。

痛む個所が股関節周囲だったり、足の付け根辺りだったりと梨状筋症候群とは違った箇所が痛くなります。



股関節後方の痛みや足の付け根(坐骨神経というツボがある)に痛みや違和感があります。




2.仙腸関節障害による坐骨神経痛

腰痛のホームページでも解説している仙腸関節障害ですが、坐骨神経痛の一番の原因の梨状筋が仙骨の裏側から起始していますので、仙腸関節が硬くなり、仙骨がずれますと一緒に梨状筋も位置異常を起こして硬くなってしまいます。

その結果梨状筋症候群と同様に坐骨を圧迫してしまい神経痛が発症することになります。


仙骨がずれることによって一緒に梨状筋も硬くなって坐骨神経を圧迫してしまいます。


仙骨がずれることによって一緒に梨状筋も硬くなって坐骨神経を圧迫してしまいます。


仙腸関節への鍼治療をすることによって仙骨の位置を正常に戻します。

同時に股関節周囲の筋肉の治療も施せば治癒率は格段にアップします。



④内臓の病変からくる坐骨神経痛

腰痛偏でも述べましたが坐骨神経痛も内臓疾患からくる神経痛もあります。

当院で多かったのが大腸がんです。

その他婦人科疾患でもありえます。

特徴的なのが夜寝ているときに痛む、腰痛の他に目立った随伴症状(便秘、下痢、生理痛)がある、などです。

いずれにしましても鍼灸治療の適応ではありません。




坐骨神経痛の治療の注意点

以上の4つの原因をしっかりと見極めないと坐骨神経痛は改善しません。

ただし当院では梨状筋症候群による坐骨神経痛が圧倒的に多いのが現状です。

お尻の筋肉の「凝り」が坐骨神経を圧迫しているなんて想像もつかないのでしょう。

もう一つ坐骨神経痛に関して注意してほしいことがあります。

坐骨神経は直径が太いところで1センチはあると言われています。

坐骨神経が一旦炎症を起こしますとその痛みは凄まじくモルヒネでも打たないと効かないほどです。

事実私の臨床例の中でもあまりの痛さに救急車に運ばれた人が少なくとも3人います。

激しい炎症を起こしているときはぎっくり腰と同様にむやみに治療しますと悪化する危険性があります。

また神経痛は温めた方が良いともって温泉などでゆっくり浸かっていますと却って痛みが増強する場合があります。

この場合も温めるのは即座に辞めて欲しいのです。いずれの場合も安静が第一で場合によっては痛み止めの力を借りるしかありません。

鍼灸治療は一旦激しい炎症が収まってから行うようにしてください。



坐骨神経痛完治には鍼の種類が多く必要

骨盤や腰周辺の筋肉は体の中で一番太くて硬いので細い鍼では刺激が十分与えられない場合が多いのです。

梨状筋諸侯群などは痩せた体形の患者さんでも6センチ以上の深さにありますので短い鍼だと十分な深さにまで到達しません。

また筋肉も厚いのでいったん「凝り」が発生しますと細い鍼だと効かないのです。

当院の鍼治療は日本にあるほぼ全ての鍼を扱えますのでどのような患者さんにも対応できるのです。

特に腰痛や坐骨神経痛には普通の鍼が効かない場合が多いのでアキュレの鍼は圧倒的な効果を示すことが出来ます。


 

 

仙結節靭帯障害に要注意!!  

坐骨神経痛に良く似た疾患に仙結節靭帯障害があります。

この疾患は私自身最初は区別がつかなかった疾患ですが、坐骨神経痛の梨状筋と5~10センチ程度しか位置が変わらない場所に仙結節靭帯があります。

この靭帯が股関節後方の隙間をなくして痛みが生じます。

この障害の特徴は姿勢をまっすぐにするとお尻に痛みが生じるなどは坐骨神経痛と一緒なのですが大きな特徴は足にまで痺れや違和感を感じないということです。

非常に良く似た疾患ですが治療する箇所が決定的に違いますので、的はずれな治療をしていますと一向に改善しませんので要注意です!!